『ノケモノと花嫁』感想 ~この鐘の音がアナタに届きますように~

ノケモノと花嫁』感想

~この鐘の音がアナタに届きますように~

 

13年、お疲れ様でした。

担当さんや掲載場所も変わっていった中、最終巻が発行されたこと、心よりお祝い申し上げます。

13年ピッタリ寄り添っていたわけではないのですが、過ぎた時間と費やした妄想のせいかむちゃくちゃ感慨深いです。

ブレーキがきかず感想文を書くまでに至りました。

考察のような深さもない、何番煎じかもわからない、稚拙で感情とハイテンションの書き殴りではありますが、目にとまった方が楽しめるよう、ともに『ノケモノと花嫁』の幸福を共感できれば幸いに存じます。

 

私については幾原監督作品は「ウテナ」~「さらざんまい」までどっぷりイクニワールド大好き人間です。

中村明日美子先生の作品は「同級生」シリーズと『先生のおとりよせ』、『おはよう楽園くん(仮)』を読んだことがあり、ライト層寄りかな?と思います。

 

※『ノケモノと花嫁』については小説版は未読で、あとがきにあった映画も観ておりません。

※大変ネタバレを含みますので、未読、ネタバレを避けたい方はお戻りください。

※妊娠中の方は読まない方がいいです!!

※幸福ハッピー脳な為「ハッピーエンド解釈」が多いので、ここで合わないと思った方はお戻りください。

 

 

 

 

 

 

感想の前に整理をさせてください!

いや皆様の多様な見解みても「全部それな~」としか思えないふわふわして定まっていない感じなんですが!

 

・世界

作品の中にある2つの世界。

世羅ヒツジは世羅洋子、兎河ギンはギン(イタルの姿)、マジョマジョの二人は市橋マリエと大倉ミユとそれぞれの名前と姿をもっています。

ココでは現実世界(世羅洋子)とカケオチ世界(世羅ヒツジ)と表記していきます。

 

・人物

これがめっちゃ複雑ですよね。個人的解釈になりますが書いていきます。

 

世羅洋子/世羅ヒツジ/(世羅/有栖川)アリス

まず世羅洋子。

父親から性的虐待を受け、父親に愛する母親を殺され、自らも父親を手にかけ、自らに宿った子供(父親は人殺し/近親相姦の末にできた子/未成年の子)も堕ろすと、事情はあれ親殺しと子殺しを行っております。かなり重い天涯孤独少女です。

「愛」については母親からはしっかりと愛情を受けていますし、こう言ってしまってはいけないのですが父親からも愛という名目の虐待行為を受けてますね(虐待ダメ絶対)

ヒツジの言葉ですが、母親からの愛と同列に父親から「かわいいね(意訳)」されて「愛ってよく分からない。怖いもの」って認識してしまって・・・・・・。自身も不安と恐怖で我が子を堕ろしてしまうのが辛ぇ・・・・・・ところです。

彼女自身が与える愛情レベルはかなり高く、お気に入りのクマの人形に自らお嫁さんを作ってあげたり、(おそらく)我が子の死に心を痛め昏睡してしまったりと、「愛する人」です。

この作品でいうと、子供ながらに「親(オトナ)」的存在になっているな、と思いました。

 

続いて世羅ヒツジ

カケオチ世界を走り回る愛に生きるロリータ美少女です。

その実態は洋子がクマ人形のために作った花嫁人形で、精神人格は洋子が父親からの虐待に逃避するために生まれた身代わり人形です。

スケープゴートはヤギじゃね?でも「山羊」にもヒツジってあるしええやん・・・・・・)

正直カケオチ世界のヒツジは洋子のアバターかなりきりみたいにみるのか。

虐待から逃れるため生まれた二重人格として、洋子とは別物としてみるのか。

難しいところですがこれはただの感想なので、場面場面で納得する方を選びます(えー)

アバター説でいくと洋子の生い立ち考えるとヒツジのはっちゃけっぷり恋愛脳っぷりは涙を誘いますね・・・・・・。

二重人格説でいくと、元々はクマ人形と幸せな結婚するために作られたはずなのに、実際には父親からの虐待を受けてしまう辺りヒツジ自身も「愛されるために生まれたんじゃないのか?」要員ですね。

個人的に「変身」って凄く好きなので「辛い現状などなんのその、愛に生きる無敵な花嫁フォーム」してるヒツジちゃんは一番好きなキャラでした。

 

(世羅/有栖川)アリス

兎河ギン付きの美少女メイド。

その実態はヒツジ同様、洋子お手製の人形でした。1話から2人はなんで似てるんだろーなーと思ってはいましたが、まさか姉妹(?)人形だったとは・・・・・・。

中身はなんなんでしょうね。イマジナリーフレンド説を見かけましたが、子供たちの誰かの魂が入っているとも、人形自体に心ができたとかでもいいなぁと思います。(付喪神ほどの時間はなくとも、ずっと大事にされて壊れるのを命がけで守ってくれた存在(ギン)への「愛」が為せる技みたいな・・・・・・)

 

ヒツジとアリスは洋子の娘たちなのかな、という感想を抱きました。

 

兎河ギン/ギン

いやまさかギン(金髪の姿)とギン(黒髪の姿)なんてビックリですよ・・・・・・やられた!

ここでは「兎河」(金髪)と「ギン」(黒髪)と表記します。

苛烈で美しい「燃えるキリン」のトップ。誰よりもオトナを憎んでいるように見えて、心の底ではオトナへの未練ありありとか苦しすぎる・・・・・・。

彼については後々たくさん語らせていただきたい。

 

僕(兎河の姿)/麒麟塚イタル/羽熊塚イタル/イタル(闇)/イタル(青年)

ふ、複雑・・・・・・!イタルの姿が一気に増えて思わず最初から確認しましたよ!!

イタル自身は「ノケモノ」という母親の腹から出られなかった。産み落とされる前に死んでしまった(流産・中絶・堕胎)子どもですね。世界に参加できない存在が「ノケモノ」?

イタルを洋子の子どもってみるのは多分間違いではないけど、多分洋子以前にも産み落とされなかったコドモたちの集合体かと思います。「洋子の子ども」はイタルの一部になると考えていきます。

「燃えるキリン」のコドモたちはそれぞれの家庭の悲しき事情でたくさんいるのに対して(傷つけられた「大勢(多様)」のコドモ描写も多い)イタルのような存在は1つになるんですね。

不可能を可能にする「黒い血」とかコドモたちの「悲しみエネルギー」と「オトナへの復讐のための力」でできた所謂「愛を知らない悲しきモンスター」的存在。

姿がないというのも、胎児になる前もカウントされるんでしょうか。

えっじゃあ目次とかのイタルの顔が見えないのってそういう・・・・・・!?作中のイタルの姿は見る者(他登場人物)のイメージだけれど、読者視点だと顔が見えないとか・・・・・・!?(一人盛り上がるオタク)

誰かに認識される前に死んでしまった存在。エコー写真にも写らない輪郭が捉えられない存在。存在が知覚できないから誰からも愛されないし、誰かを愛することもできないのかな・・・・・・と。

そんな彼が救われるお話になったと思います。思いたい。

 

時系列でまとめるならば

ギンの前に出てきた「僕は君だ」してるのが僕(兎河の姿)

これは姿を持たないがゆえに何にでもなれるってことかな。その人の見たい姿で現れることができるんですかね(悪魔みたいじゃん・・・・・・)

その後ギンから姿を借りて「燃えるキリン」活動をしているのが麒麟塚イタル。

活動シーンは現実世界なの?カケオチ世界なの?わりと行き来できちゃう感じ?

ギン自身が

あの容姿が嫌だったのか(「どんどんあの女に似てくる」)

生まれ変わりたかったのか(「どうすれば愛してくれたの(綺麗だったら愛してくれた?)」)

兎河の姿になりたくてイタルと「交換こ」したのか細かな理由はわかりませんが、外見をゲットすることはできましたね。

いやーイタルが本当に世良家の子なら外見も似るよな・・・・・・でも眼の描き方は似てる?髪色は隔世遺伝か?と思ってたらその姿も借り物だった時の衝撃・・・・・・。正直あの外見含んだ「イタル」が好きだったので「その外見別人っすよ」されて脳がぐっちゃぐちゃにされました。う~ん漫画ならではの表現・・・・・・。

プードルちゃん曰く麒麟は「コドモたちの悲しみの集合体」らしいので、それの塚(墓)に至る・・・・・・ってこと?悲しすぎんか?

地下室でヒツジと出会いクマの姿を得た羽熊塚イタル

羽に熊って悪魔かよ・・・・・・って初期に思ってました。その後「ユリ熊嵐」が出てイクニ的にかなり暴力的/攻撃性がある存在がクマなのかなぁ・・・・・・。

(暴れカンガルーも相当かと)

けれども羽熊塚になったイタルは愛に生きる存在でしたね。端から見たら悪でも、幸せになる努力と、行いを悔いているのでそういう存在になったのは受け入れていきたいです。

イタル(闇)

本当のイタル。

今までは人型でしたけど本来は形なく広がる闇。人を飲み込む強大さと溶けてて触れられない悲しさ。

この「存在」が「イタルとして生きたい」って言ってくれたことが改めて感慨深いです。

イタル(青年)

ギンから完全に姿をもらったということでしょうか。

受肉ってやつか?どうやって?その場合手足は何であるんだろうってところはまぁ不可能を可能にする黒い血があるしな・・・・・・とか思考停止してしまうんですが。

洋子と外見年齢が同じくらいなので、現実世界のギンの身体が残っていたと?

ギンも実は心中ではなく昏睡状態だった?などなど思うところはありますが、突き詰めすぎるとファンタジー作品として楽しめないし、彼が救われ彼の口からあの言葉が出たことはほんともう、やばかったので・・・・・・。幸せならオッケーです・・・・・・(思考停止)

 

整理はここまでに、8巻の感想に入りたいと思います。

いやほんと8巻素晴らしすぎるので表紙から語りますね(えー)

 

○表紙

花嫁姿のヒツジちゃんとクマイタルのツーショット。

え、素晴らしいんだが。めちゃくちゃ素晴らしいんだが。これが見たくて待ってたところあるよね。

この表紙が素晴らしいのはもう1巻見れば分かるんですけどドレスのデザインが違うところですよね。1巻から「あーこれが探していたドレスなのねーこれで結婚式をあげるのねー」ってさせといて実はコレ世羅パパのために「お前が花嫁(ママ)になるんだよ」ドレスですもんね(言い方・・・・・・)

黒い花嫁の衣装は二の腕辺りにモコモコ(名前分からずすみません)がついていて、世羅ママのドレスと同じです。なのであのドレスで結婚し愛を誓い合ってしまえばヒツジ(洋子)は一生世羅パパに縛られてしまうんですよね。「私はまた生まれる」「彼女はまた麒麟を産む」って世羅パパ輪廻転生する気満々じゃん、輪をつなぐ気満々じゃんってすごく怖くなりました。

「着なくてはいけない」という使命感は花嫁人形だからか、世羅パパの呪いかは定かではありませんが、まさか1巻表紙がバッドエンド示唆なんて誰が気づくねん・・・・・・天才かよ・・・・・・。

それが!ママのドレスではなく、イタルのためのドレスになったんですよ!やったぜ!

正直ママのドレスだって洋子にとっては最大の幸福の象徴でしたよ回想見る限り。でもそのドレスの相手が世羅パパ固定ならば話は変わるのでお色直しをさせていただくってことでしょうね。真珠のネックレスもいいよね。Wikiでは世羅ママの名前真珠みたいだし、ちょっとママのドレスの供養でもあるんでしょうか。「I」のイニシャルもいいよね。イタルのイニシャルで「I(私)」で「I(愛)」。

調べましたら純白のドレスは「純潔」「あなた色に染めて」って意味があり洋子や黒い花嫁のこと考えると辛いですが白色には「生まれ変わる」って意味もあるそうです。洋子ではなく「だって私はヒツジだもの」とヒツジがウエディングドレスを纏うのは、身代わりで虐待を受け純潔でなくなったヒツジが生まれ変わり、その浄化が洋子に還元されていったのかなぁと思いました。

それと、結婚というのは一種の儀式なんでもっと小道具とかいろいろありますし、個人的に指輪とかブーケトスとか好きですが『ノケモノと花嫁』はドレスと鐘がメインでしたね(オープンカーもあったけど)まぁ元はファッション誌だしえぇやろ(えー)

 

表紙だけでも語りすぎた・・・・・・。本編はいります。

いやー最初は「人外×少女だイエーイ!異類婚姻譚だイエーイ!」してたのにコドモの境遇が前面に出てきて「貴種流離譚的なやつだったか・・・・・・」とか「行きて帰りし物語か」「ネバーランド症候群か」「お人形劇か」「胎児の夢か」「様々な概念の擬人化」などグルグルしてましたが最終的に「カケオチ漫画」だったんだなぁと原点回帰しましたね。主役二人だけ見ると「その結婚待った!」して反対を押し切って誰にも邪魔されない場所で愛を誓い合った無敵な結婚物語でした。拍手。

それ以外にもそれぞれの「輪(絆)」が大変よかったです。まろにえはイイ女だよ。

 

・102話

クロスになってからの話ですね。鐘の音というギミックが増えました。

カウントダウンのように終わりを示唆します。ヒツジの足も黒化が進み、世羅パパを撃ったとしてもまだ輪から逃れられていない。なら結婚しなければならない。「それが世界を救う唯一の方法」なのだから。

イタルサイドでは兎河と対面。麒麟という獣になった兎河はコドモの悲しみとオトナへの憎しみでいっぱいです。エイジ(コドモ)の足を奪うなど、なりふり構わない状態。

イタルはその兎河に「救いにきた」と告げますが、兎河ははねのけます。

イタルが生きて結婚するためには兎河を殺さなければならないし、イタルが死んでしまうとヒツジは汚れたまま洋子の浄化はなされずまた悲しみの連鎖が続くことになります。

麒麟を産む」問題は、世羅パパ撃ったんで解決じゃね?とも思いましたが、洋子の救済(結婚)がされてないので、彼女が幸せにならないときっと洋子は麒麟(不幸なコドモ)を作ってしまうんでしょうね。

 

 

・103話

「ビターチョコのヌガーバー?いいじゃない大好物よ」

「次に生まれ変わるとき女のコじゃなかったらカワイイスイーツになりたかったのよ」

「望むところだわ」

ま、まろにえっ・・・・・・!!!!!

 

ここにきて更に好感度を上げるのか・・・・・・!この台詞作中で1番好きです!

みゆたんの同意と主張も凄くすきですし、ここイイ女しかいねぇなマジで。

書き下ろしもめっちゃかわいかった・・・・・・。

 

アリスサイドではエイジと対面。

「行ってすべきことをしろ」「たとえ世界が終わろうとも」とエイジは語ります。66話でエイジはアリスの役目は「兎河を守ること」と言っていましたが、それは兎河を守りイタルに死んでもらうってことでしょうか。エイジにとってはイタルでなく兎河が自分を救ってくれた存在なので、優先順位は兎河のが上なんでしょう。その彼を一瞬でも見限ったのがよくないと自分で言ってますが、喧嘩してもいいじゃない友達なら。エイジもアリスも兎河に心酔していますが、そういうのが孤高のウサギを作ってしまったと思います。彼はイタルとの離別で泣いてしまうような孤独が辛い人間なので、うまくいかねぇよなぁ・・・・・・。

ともあれアリスは走ります。アリスはウサギを追いかけるものですからね。

 

・104話

「次に会えたら?冗談じゃないわ」

「会いに行ってやるわよ」

「それに私たちはもうお友だちよ」

「違う?」

ま、ままま、まろにえっ・・・・・・!!!!!

イイ女エンジンフルスロットルでたまらんな。

 

飛び込む前のヒツジの言葉、むしろ洋子を感じますね。

最終回を踏まえるとまろにえとみゆたんとは同じ学校の生徒で、プードルちゃんは病院の担当医だったんでしょうか。彼女たちはおそらく虐待を受けた子どもではなく徳大寺警部同様「呼ばれた存在」ですかね。まぁマジョマジョの二人なら軽々飛び越えてきそうですけど・・・・・・。

「お友だちになってくれる?」という悲痛な願いは、洋子の境遇を考えると(こんな私でも)って入りそうで本当に勇気のいる言葉ですね。彼女たち、まだ学生ですもの。

まろにえの言葉はヒツジまたは洋子の心に届きます。今まで足から黒化が進んでいる描写ですが、車から離れるときちょっとだけ白っぽくなっているのは救われているのかなと願わずにいられません。

「ありがとう。大好きよ・・・!」と離れるヒツジ。女の友情という愛し愛される関係がそこにはありましたね。

最終的に彼女は結婚し愛を手に入れるわけですが、現実世界でたった二人ぼっちでは困難が多すぎるよなぁという不安を彼女たちとの絆ができあがることで現実世界でも支えが増えることは大変喜ばしいことです。プードルちゃんも二人を守るオトナがいるのは心強いです。

周りの愛に押されイタルのため飛び込むヒツジと彼女に気づくイタル。その隙を突く兎河。

女たちは互いの絆を深めることができたのに男たちの地雷の踏みっぷりはえげつないものですね。生まれる前に死んでしまい「生まれたかった」イタルにとって兎河の言葉は「生んでもらっておいて」だし、あんなひどい仕打ちを受けるくらいなら「生まれたくなかった」兎河にとってイタルの言葉は「誰が頼んだ」だし。

互いに「俺の方が可哀想だが?」と不幸合戦してしまっているようで、個人的に不幸合戦は不毛だと思っているので読んでて辛かったです。

いや境遇の辛さを吐き出すのはいいんです。吐き出すことで楽になれるなら聞くし慰めてあげたい。でも不幸でマウントとってくんのは違うよなって思うんです。それでとった優位性って、悲しいです。『フルーツバスケット』で心に刺さりました。

けれどもこのぶつかりで兎河ではなくギンは「愛されたかった」というオトナへの執着を自覚しますね。その瞬間ギンの姿が現れ忘れようとした記憶が呼び起こされます。

真っ黒だった姿から肌色が見えたり、手の形になっていたり麒麟らしさが薄れてしまったのがみえますね。化け(物)の皮がはがれるっていううまい表現に痺れます。

 

・105話

キッッッッツ・・・・・・。

ギンの話ってわかっているんですけど外見がイタルなので二重に苦しい。

おそらく「美しく虚飾された」兎河の回想と同じでギンママは夫に捨てられて狂ってしまったんですかね。コドモを殺してしまうのも大変ひどいことですが、自分の鬱憤を晴らすために生かし続けるのもひどい話です。

世界を仕切るカーテンの向こう側。虚像を写すテレビの中。美しい女性と美しいコドモ。美しい母子の姿を見てしまったギン。「こんな世界(愛)があるんだ」っていう救いと「自分はどうあってもそうなれない」という絶望を感じさせます。

それでも外見の交換こを行ったことと「どうすれば僕を愛してくれたの?」から、外見が美しかったら愛されていたかも。また「かわいいギン」と言ってくれたかも。というのが見えるような見えないような。

 

そのギンの元に響くチャイムの鐘の音。

玄関までの短い距離ですら汗をかき息を切らす姿は痛々しい。外からのコンタクトに応えた先には、

「私は洋子。 世羅洋子よ」

うっっっわ・・・・・・。

もうヒツジの名前がどうやってできたか分かるし、今までの内容で羊水って連想してしまうし、じゃあお洋服がテーマとかちょいちょいちょい・・・・・・「洋」という漢字にめちゃくちゃに心揺さぶられます。

この出会いにギンは洋子への「運命」感じてしまってもいいと思うんですけど、彼の心が惹きつけられたのはアリス人形の方でしたね。

個人的に洋子はオトナ的存在なので運命の人というよりはサンタクロースだったんでしょうね。クリスマスだったし、サンタさんもコドモを愛する存在ですし、作中にも出てきましたね。というかクリスマス、つまり真冬にギンはあの格好だったのか辛ぁ・・・・・・。

 

・106話

こえぇ~~~~~!!!

ギンママの登場の仕方とか、リボン見つけるシーンとか、嗚咽の書き方とか。中村先生の描写力が光る!そして私はハッキリ描写されない方が想像力が働いて妄想が膨らむ!(ママの言動・表情・ギンの表情や状態とかね)兎河ママ同様ヒール音がやばいですね。ギンや兎河にとってオンナってコツコツ靴音鳴らす悪役(ヒール)ってことか。

(比喩なんでヒールとヴィランの違いについては深く考えないものとする)

世羅ママお手製のおいしいクッキーを一度は躊躇うところ(食べることへの恐怖心できてんじゃん!)からベットで隠れて食べるシーンなんかつまみ食いより証拠隠滅って感じがしました。味わって……いいんだよ……(食べること大好き人間)

暴力と悲鳴で軋むベットの下にはちょこんとかわいく座っているアリス人形というミスマッチ感。ギンの献身っぷりが、ほんと、やさしい子なんだろうなと感じます。現状が解決しなくてもお腹が膨れなくてもギンにとってアリスは心の支えになっていました。ほんの爪先で存在を知ることで安心しちゃうところとか……(涙)。人形にも心が宿るなら、アリス人形にとってここまで大事にしてくれる人が暴力を受けて、自分は何もできないことの歯がゆさったらないですよね。

 

実際にギンの元に来たのはかつて見た美しい存在の姿をしたイタル(僕)

「僕」が現れる条件はわかりませんがオトナに殺される前に反逆しろと囁いてくる存在に見えますね。光がさしてるのに影がないところとか、人間じゃないんだなと思わせてくる。

「何も分からない君」といわれるギンに「僕」は「かわいそう」と言葉をかけて、そっか自分ってかわいそうなんだと漠然と感じていたと思います。なら生きてたって辛いしアリスを残すのも辛いけど親には敵わないから死んでもいいかな……なんて考えようもんなら目敏い母親は宝物を殺しにくるんだからほんと、ほんっともう……!!クッキーの件といい執着がやばい。浮気の件がトラウマになっているのか他の存在絶対許さないウーマン。

その母親相手に「僕」は手出しすることはありません。まぁ存在してないですし、何もできないんでしょうが、コドモに「殺せ」と囁く悪魔っぽさが昔のイタルの闇の深さですよね。漫画初期のツッコミ役だったイタル見てるとあまりのギャップに驚きます。でもこの「僕」がイタルになっていくのが大事なんですよね。がんばったよイタルがんばったよヒツジ。

 

・107話

ぐえぇぇえ……。

大事な存在を守るために火事場の馬鹿力を発揮する。

字面は素敵ですが、絵にされると散らばる白い羽の後に血だまりで蹲る黒い羽をもった存在で思いっきり「堕ちた」ってことを示唆してきますね。ギン自体は悪いこと何もしていないのに理不尽な暴力を受けていた穢れなき天使(コドモ)だったのが殺人を犯してしまったことで穢れ堕天しましたといわれてるみたいで……。

真実を思い出し心砕けた弱々しいギンの姿。「美しく虚飾された思い出」でも大まかな流れは一緒ですが、それでも塗り替えなければ受け入れられないほど自分が殺人を犯した事実は消したかったのでしょう。比較してイタルは選択を与えるだけで「殺せ!」って強くは言っていない。あくまでギンの選択だったけれどイタルの要員が強くなった気がします。なんせ学園編の真相を語る53話のサブタイが「彼の夢見た世界」

ギンが夢見た世界学園生活ですが、マジョマジョの発言を見ると洋子から裁縫道具を借りた事実は確かなので、なんやかんやあってマジョマジョもしくは洋子の学園の記憶をギンが自分とアリスとイタルを入れて追体験したんでしょうかね。

それなら26話で兎河に会ったマジョマジョの二人が「ダレ!?」したのもわかるし、兎河が二人の本名知っていたのもわかる。

 

ふと徳大寺警部の言葉を思い出しますが、あの斧はギンの四肢を切り落とすように描写されていましたが、回想ではギンが母親を殺害する道具でした。

ギンがその腕で母親を殺したなら、ギンの四肢を切り落としたのはダレ?

ギンの肉体を得た羽熊塚イタルの姿を見ると、四肢の先はクマと同化して見えないのでおそらくギンの四肢も切断されているとは思います。

ギン自体が虚弱なので正直馬鹿力発揮しても即死まではいかず、重傷を負わされ激昂した母親に切り落とされ、その後二人まとめて死亡か?

警部のシーンでは血まみれの母親らしき人は映っているが、ギンらしき人物には切断されたとまでで「彼」が死亡したかどうかは明確にはなっていません。

(いや普通死んじゃうだろうけど)

ニュースの東京都S区心中事件は金髪美少年に実際起きた事件でありギンとは別件として、ギン自身は(四肢はないが辛うじて)生きているかもしれない……。

それなら最終回で肉体が得られる・・・・・・。四肢はなんか黒い血で生えた(えー)

なんなら人物整理の「その人の見たい姿で出てくる」論を否定しますが、事件から金髪美少年も悲しきコドモになるなら、麒麟であるイタルがその姿を得てもおかしくはないのでは・・・・・・と。ギンの肉体現存説を濃くしていきたいところです。

もしくは警部が語るのはあくまで現場検証の結果そうなったのでは?という憶測を告げたに過ぎない。それか改竄されているかもしれない。

カケオチ世界で起きたこと(警部が世羅パパを殺す)など現実世界に作用するのかしないのかってところですね。

考察が楽しめそうなところですが、まぁこの後の描写が衝撃的なので進みましょうか。考察できる人に任せましょう私のはただの感想なので(えー)

 

「だったら殺されたかった」

この弱々しい兎河の表情がほんと、ヴィランやってた兎河からは考えられないですね。

73話で世羅パパは「打ちひしがれているヤワな甘ったれ」と言っていますが正にそう。あの男行いはギルティだしお前が言うなって感じだけど言ってることは大体正しいんだよな。

この羽の生えてる方がギンで兎河。立ってる方がイタルでしょうね。

ここ1番辛い場面で「殺されたかった」って言ってイタルの手を首に持ってくるところ。

一連の描写は本当に凄くて、ほんと先生はいい絵を描きなさる。

世羅パパもそうだけど、相手に一生の傷つける願い事するよな。それでも引き金引いた警部を私は頑張ったねって背中さすってあげたいけれど、一気に焦るイタルの気持ち考えるとうーん。うーーーん。

しかも「ありがとう」って。うぅーーーんんん!!

私地下室のエピソードが好きなんですけど、イタルは生きてる内に愛されなかったコドモたちにせめて最後は愛を込めて逝り出しちゃうタイプだったので。それがまだ生きてる、しかも友達、かつては志を同じくした仲間、「僕は君」した存在をその手にかけるってキツい・・・・・・。だってイタルは「救いに来た」んだよ。

けれどもイタルももう救いがソレしかないと思って手をかけたんだろうなと、あの噛みしめた唇から感じてしまいます。

兎河自身、現状はイタルのせいにしてて、あながち間違いでもないことから、責任を果たすというか、因果応報といえばそうかもしれないけれど。これはキツいってーーー。

兎河の頬にイタルの血涙が落ちますが、イタルの涙はよく子どもたちに落ちます。これ普通なら呪いが解けるお約束なのに・・・・・・。世羅パパ同様「その人を心から想っての行動」はなんであれ「愛」とするなら、確かにこの時兎河はイタルに愛されていたと、「救い」とみることはできるけれども、けれども・・・・・・。

 

「彼を殺したのね・・・・・・!」

 

トドメきたわ・・・・・・。

 

・108話

前話でそれも1つの愛の形しておいてアレですが第三者(アリス)から見れば立派な殺人で、それも全く間違ってはいない。

世羅パパ格言(ほんとコイツなんなん)ですが「人の幸せとは愛し愛され生きること」なので、片方の一方的な感情の押しつけは許容されない。ユリ熊的に言えば「傲慢の罪」さらざんまい的にいうなら人を傷つけても自分の欲を優先する「欲望」。兎河は最期で凄いキズを残しましたな。

アリスの怒りは兎河姿のイタルに向いているので、彼女が見ていたのはずっとギンだったのだと分かります。38話でも何もかもが綺麗なの だから 愛さずにはいられないの」だって、もちろんその時も外見のことをいってたんじゃないと分かりますが、ギン時代の行いを含めて想っていたのではと推察できます。イタルのドロドロに飲まれながらも懸命にギンに手を伸ばす姿とかも、アリスにとっては姿が変わろうともギンという個人が大切なんですね。

 

イタルは自分の手で殺し、アリスにも指摘され自他共に殺人を犯したと思い知ると自壊。悲しみがあふれ姿を保っていられなくなります。

 

彼のたどり着いた見解は次の話にするとして。

 

友を殺し、かつて仲間だった、愛している少女に似ている存在から責められ、内側からの悲しみを抑えきれず、ドロドロが叫ぶ「殺せ」「殺せ」という怨嗟に飲み込まれるイタル。

いつもイタルは苦しくて悲しくて寂しくて泣いています。

はじめからオトナを殺したいと憎んでいたのはイタルのみで、他のコドモたちは憎んで嫌っていたとしても、本当はオトナを愛している。殺したくなんてなかった。こんな思いをしているのは自分だけ。ノケモノ。

そんな自分を誰が愛してくれるのだろう。

 

 

 

そこに満を持して降り立つヒツジ!!

花嫁降臨!!

イタル!君を愛する君のための花嫁だ!

 

今までしんどい展開だったのでガチの救世主感ありますね。美しすぎる花嫁フォームヒツジちゃん。ここのドレスのひらひらっぷりとかたまりません。先生ありがとう。

イタルの涙に呼応するように降り立つヒツジはいいですね。愛の召喚って感じで。お前を愛する者がいるぜ!ここにひとりな!って感じ。

 

真面目にやります。

 

ヒツジが降り立って見つけたのはボロボロのアリス人形。ひとりでに動き出す人形について行く花嫁。えーコレバージンロードじゃーん・・・・・・。花嫁が歩くっていったらバージンロードじゃーん・・・・・・。でもバージンロードって扉から祭壇までなのか。違うか。

花嫁を先導する子どもっていたなと想って調べますと、フラワーガールやリングボーイがいるようですが、これも違うかな?

でもそれっぽく見えるよなーって楽しめる要素ではあるので好きな描写。ありがとう。

アリスの先導によってヒツジは扉にたどり着きます。そこで役目は終わったかというようにほどけるアリス。アリスの役目はサブタイ通りなら入り口への道案内。彼女はギンが大切ですが自力で立ってヒツジを案内したことからアリスも二人に期待したのかもしれません。

このほどけるアリスを見るヒツジがまた切ない表情をしますよね。個人的解釈ですが洋子としてみるなら自分の作った人形で子ども、ヒツジとしてみるなら姉妹ですからね。

 

そしてヒツジとイタルの再会で物語はクライマックスへ近づきます。

 

 

・109話

暗闇の中を進むヒツジと悲しい、こわいと語るイタル。

自分が世界で一番不幸だと思っていたイタル。

 

イタルは胎内で死んだコドモという概念で、親の手を握ったこともない。抱きしめられたこともない。

胎教などありますが、胎内の赤ちゃんは母親や父親の言葉は届くのでしょうか。水中は音が聞こえにくいけれどもお腹の子に向かって「早く会いたいな」「元気だね」「愛してる」とか語りかけることはあると想います。

調べると妊娠24週くらいで聞こえるようですね。これまた調べた中絶手術が可能なのが母体保護法により妊娠22週未満、流産も妊娠12週までに起こるのが多い・・・・・・。

 

聞こえないじゃん。届かないじゃん。愛されてるなんて分からないじゃん。

 

ネットで簡単に調べただけで間違っているかもしれません。作中には胎内で医者の言葉を聞いているシーンもありますね。

互いに愛し合う為には、相手を認識することが大事ですが、もうどうしろと。

イタルと「彼等」は違いすぎて、イタルこそが一番の不幸者だった。

 

ここまでは、108話までのイタルの見解。

 

けれどイタルは実際の生まれてきたコドモたちがどんな目に遭うのか嫌というほどみてきます。今までは愛されていないから産んでもらえなかったと思っていたイタルにとって、産まれたのにオトナに傷つけられるコドモ達という世界に「愛されるために産まれてきたんじゃなのか」という衝撃。

それでもコドモはオトナを愛しているというのは、イタルにとっては理解できない世界でしょう。産んだ責任を取られず愛を裏切られ、愛している存在に殺されるという「本当に不幸な彼ら」。

イタルはノケモノの自分が耐えられず、もし産まれるチャンスがあったとしたら、きっと奮闘しますがその結果彼らのように愛されなかったら?産まれてから殺されてしまったら?

ただでさえノケモノとしての不幸で苦しいのに、さらに別の不幸があるかもしれないとしたら?

どっちにしろ明日に夢も希望も愛もない。「さみしい」って感情が止まらない。

こわくて、こわくて、動けなくなる。いっそ消えてしまいたい。

 

「いやよ」

「お願い」

「だって約束したじゃない」

「私たち結婚するのよ」

「誰もあなたを殺さない」

「殺させないわ」

「2人で一緒に生きていくのよ」

「愛してる 愛してるわ」

「愛してるわ イタル」

 

あーーーー・・・・・・(号泣)

この時のヒツジは、麒麟の中にいて黒化がめちゃくちゃ進んで悲しみに飲み込まれつつありました。それでも前向きにめいいっぱいの愛の言葉をイタルに投げるヒツジがほんと素敵です。

わりとヒツジの愛って強くてイタルの言葉や考えを否定したり食い気味だったりめっちゃグイグイくるものでしたが、イタルがここまで愛に自信がない場合、むしろ適切なアプローチだと思います。愛の言葉をかけたのはヒツジから。結婚しようって言ったのもヒツジから。

ガンガンいかなきゃダメだイタルみたいなタイプには。

21話で「愛し合っている2人は結婚できるのよ」から世羅パパの「人の幸せとは愛し愛され生きること」なのでイタルの「不幸になる」って恐れを結婚して「幸せになる」って諭します。改めて「愛されるために生まれてきて」って言ってるんですね。2人にとっての結婚は、家族になるというより幸せになるためという意味合いが強いわけです。世界(イタル/ヒツジ/洋子)を救う方法ですね。

ヒツジの想いが届いて、ゆっくりとしかし確実にイタルに輪郭が出てきます。これは「姿がない」といったけれど、ヒツジがしっかりと「イタル」という個人を認識したということでしょうか。大事にしたいといっていたキスシーンでは、イタルの腕が白く形成されています。

 

2人がキスをすると、病院で一人の少女が目覚めます。世羅洋子その人です。1話でキスについてのモノローグがありますが、愛を証明するキスと物語のお約束「目覚めのキス」ですね。社会問題や現実的な描写をしつつも物語らしい要素が混ぜられているこの世界観が好きです。

 

あと本当の不幸について私見ですが。65話でエイジが「悲劇にレベルはない」と言っているんですが私はその意見に賛成派で、イタルの見解には異を唱えたい。

(まぁエイジ自身自分の境遇軽んじられた反論って感じもしますが)

イタルだって充分苦しんだし辛かったし寂しかった。だから「本当に不幸なのは彼らだ」って今までの自分が本当の不幸じゃなかった、アッチの境遇の方がより不幸で可哀想で、コッチはそうでもないんだって考えはしないでほしいな。という気持ちです。皆幸せになる権利はあると思うので。

 

・110話

「ご関係?」

「面会する人との関係でしょ」

「そりゃあ お友だちよ」

いっ・・・・・・市橋マリエ・・・・・・!!!!!

 

鐘の音が鳴り始まる最終話。

ここで制服姿の市橋マリエ、大倉みゆ、ドクタープードルの登場。マリエの発言からカケオチ世界の記憶は継いでいるとみていいですよね!かなり蠱惑的で色っぽくなった3名。こう見るともしや学園編ってデフォルトされた姿?てっきり中学生かと思ったけどもしや高校生?とちょっと謎が明らかに。いやぁなんかプードルちゃんとかカワイイ顔しておっぱいデカすぎじゃない???と思ってましたがデフォルトだったのかー納得―。カケオチ世界にいくと子ども化するとか?でも警部と世羅パパは成人っぽかったな。まぁもしかしたら中高一貫で制服も替わらないのかもしれないですが。やっぱり謎は謎のままか・・・・・・。

 

ここからは洋子とイタル(青年)のシーン。

そしてコドモを失った親と親に愛されなかったコドモの救いのシーンですね。

お腹に手を添えている洋子に声をかけるイタル。洋子の反応からイタルの姿を見るのは初めてのようです。小さい頃ギンに会ったこともヒツジとしてイタルとカケオチ世界で繰り広げたことも記憶にはない様子。

木陰でともに腰掛ける2人。なんだ日陰者か?と邪推しつつ。

洋子は大切なものをなくしてしまったと呟きます。お腹に手をあてていることから赤ちゃんのことを言っていると思うので、洋子は妊娠をしていたことが分かります。

個人的に洋子が病院に至る経緯に世羅パパ窓から落下死事件で心中してはいないかと思ったこともあります。回想だと開いた窓といない世羅パパの姿、突き落とした犯人は洋子となっておりますが、警部視点だと洋子の姿が窓の側になかったので一緒に落ちてしまい、そのまま昏倒し病院に搬送されたのかと。証拠が少ないので妄想ですが。

なんやかんやあって病院で検査の結果妊娠が発覚。事情を鑑みて堕ろすこととなるが、両親と子どもを一気に失い、手術も重なり体力面も精神面が耐えられず昏睡だったんかな。

看護師の反応からしてもそれなりに長い間目覚めなかったようですし。

記憶が曖昧になっており、大切なものも何かわからず放心状態。それでもとても大切だったことはわかる。大切な命だとわかる。それでもこわかった。近親相姦の子、犯罪の子、人殺しの子、恐ろしい血が流れた子、世間の目、学生の自分、ひとりぼっちの自分、愛が分からなくなってしまった自分。

たくさんの不安があり、堕ろすことを選んだ洋子ですがそれでも「大切なもの」で「愛していた」。

ここで洋子がコドモを「愛していた」と言うことは産まれずに殺されたことを「愛されていなかった」と思っていたイタル、またはコドモたちに、「愛されていたんだ」という救い。そして「殺してしまった」という後悔から望んでしたことではなかったことが分かります。

ここでイタルは救われたのではないでしょうか。

 

そして次は洋子、もとい我が子を堕ろしてしまった母親に対しての救い。

 

「死なないよ 愛されたものは死なない」

「愛は何度でも生まれて 君の前にあらわれる」

 

この言葉を見て、最初から読み直してどれだけの愛があったのかと改めて沁みます。

作品内で「死なない」っていうと「燃えるキリン」の黒い血を持ったコドモたちですよ。

けれども彼らは死なないより「死ねない」と言ったほうがいいかもしれない。けれどこの言葉を受け止めるにピッタリなのがトナカイだと思います。

多分「燃えるキリン」のメンバーはコドモのまま憎しみを抱えたまま終わってしまっていて、オトナへの憎しみの輪に囚われている。けれどそこから誰かと愛し愛されたトナカイは輪を抜けることができた。業火で消えてしまったけれど彼はきっとまた生まれることができる。

そしてイタルの葬送でも愛を込めていた。きっとあのコドモたちだってまた生まれてくる。愛してくれた人の前に。

傷心の洋子に「愛することを諦めないで」と「僕(可哀想なコドモまたは自分自身)を愛して」と自分を殺してしまわないように生きてほしいと告げて消えていくイタル。

そして鐘の音がなる。

 

ちょっと小話。

赤ちゃんの出産について。手塚治虫先生の『ブラックジャック』でBJが出産に関わった話。「無脳症」の子どもで生存能力が皆無の子ども。その子がどんな一生を送ることになるのか、母親がどれだけ傷ついてしまうのか。そのことを考えてBJは「殺せ」と言います。『ノケモノと花嫁』読んでると昔読んだこの話がちらつきました。出産って本当に運命の瞬間なんだなと。作中の医者の台詞もこういう理由なんじゃないかと思うんですけどね。天秤にかけなきゃいけない選択しなきゃいけないものって「あの時あっちを選んだら・・・」って悩んで苦しむこともあるし、もちろんその人によるけれど今回のイタルの言葉は選択をした洋子の心を軽くしてくれたと思います。

 

 

閑話休題

おしゃれする兎河。

あれ~~~~そ、存在してる~~~~?????

まあ愛は不滅ですし、何度でも生まれてくるし彼らは黒いモヤモヤに飲まれたけど業火に焼かれたわけじゃないしうんよかった~~!!!

お祝いはするけれどそちらには行かない兎河。変わらずオトナを殺すと宣言する兎河。

私ずっと愛だねうんうん愛って最高だねってしてきましたけど兎河の意思は全く責める気はないし応援したいんですよね。

いや、だって悪いオトナは減らないんだよな~~~。

13年前に連載開始された時から変わらないことなので。

さっきイタルの対応は良かったと思うんですけどそれは堕ろしたことを悔いて死んでしまいたいほど苦しんでいる人々への救いになっているなって感じたから。「コドモできちゃったけど面倒なんで堕ろしちゃいました!また来てね☆」なんて無責任な人間には言ってないので。

コレは私の押しつけになってしまうけれど「燃えるキリン」がそういうオトナへの抑止力、虐待されるコドモたちの救世主の立ち位置になってくれればと思っています。けれどギンの時に墜ちてしまった兎河はもうこの道を決めたのなら仕方ない。悪のオトナを描いた作品だったけれど、悪のコドモだってこれ以上増えてほしくないなと思います。

そんな彼らの輪なんですけど。

エイジに協力を仰いだりアリスがメイド服を脱いで自分の意思で選んで着替えたりかなり良好な関係になっていると思います!!アリスが髪型とかますますヒツジ(愛する者)に近づいているの期待しかないですね!!エイジとアリスは兎河に恩があるし大好きなんだよなぁ。兎河の側に誰かがいること、そして二人は兎河を愛していることがめちゃくちゃ嬉しい。

 

 

そして三度目の鐘が鳴り、結婚式が始まる。

ああーーーー・・・・・・。やっとここまできたね・・・・・・。

最初から二人が結婚することは決定事項だったのですが、ここまでの歩みを考えると目頭が熱くなる!!

特に素晴らしいのが、二人の結婚式をたくさんの人たちが祝福してくれているということ!「燃えるキリン」のコドモたちですら!そう!彼らからの祝福があるというのが凄い!

兎河の言ってた通りなら、オトナになる儀式である結婚をオトナに虐げられた「燃えるキリン」のコドモたちが祝福なんてできるのか?

けれど二人は愛されなかったコドモで、罪を犯していて、方やコドモの象徴方やオトナ的存在。

愛されなかったけれど互いに愛を誓い合うことができる。罪を犯したけれど離れずずっと一緒にいる相手がいる。オトナはコドモを傷つけるはずなのにどちらも愛し合っている。

いろいろなことが証明され誓い合いシーンになっていると思います。

コドモたちにとってはとても未来ある場面なのではないでしょうか。ギンの見たテレビの向こう側ではなく目の前の真の愛。幸せになることはできるんだとコドモたちに勇気を与えているのだと思いました。

 

あとここから語ってしまうのですが「鐘」について。

鐘の回数になんか意味あるのかな?と調べたのですが

1回目は「自分たちへの祝福のため」

イタルとヒツジがちゃんと自分を幸せと感じ祝福している!

2回目は「育てた親への感謝」

あー・・・うん。

3回目は「来てくれたゲストへの感謝」

さっきも言ったんですけどほんと皆に祝福されてるのはいいと思うんです!主役2人も彼らが来てくれて感謝しているっていうのがいいんです!

 

そもそもウェディングベルは参列できなかったゲストに無事結婚式を挙げたことを鐘を鳴らして伝えようと始まったようで、もし誰かに伝えたかったのだとするなら誰か?

徳大寺警部だ・・・・・・。

101話戻ったらしい警部は墓場で教会の鐘を聞くシーンがありますが、あれは式に参加できなかった警部に「結婚できました(幸せになりました)」ってお知らせだと思いました。かつ『ノケモノと花嫁』は『ノケモノと花嫁クロス』となり掲載場所も変わりました。クロスから無印へ無事完結したというお知らせだったのかなと。

そして鐘は邪気を払い幸せを呼び込むことができるそうで、それをイタルがやっているというのがとてもいいと思います。一度は不幸そのものだったイタルが幸福をしらせるポジションになっているのは、本当にいいと思います。

キグルミの中身は見えない。ギンの見た目はイタルにあげているから、もしかしたらこの中身はキリンなのかもしれない。燃えるキリンのメンバーがキグルミやかぶり物しているのも何か考察しがいがあるかもしれない・・・。

 

そして立ち直り歩き出した少女。スカートを短くして大人になった少女。

何かに呼ばれたのか気づいたのか振り返る。

その顔は作中何度も見た「愛している」表情。

 

ほんとに愛が詰まった作品でした。

正直WEB連載時感動した後あの最後は「体験を経て少女は成長し大人になりました。素敵な彼ピッピと出会ってシアワセ。ありがとう青春の思い出♪」ってENDだったらどうしようと思いました(相手の顔が見えないので。いやでも髪・・・)

裏表紙でちゃんと「彼」だったので心底安心しました!!

 

あとがきの言葉も沁みる・・・・・・。ぜひコミックで皆様読んでほしい。

あとアニメイトのおまけもよかった・・・・・・。もうちょっと二人のいちゃラブみたかった・・・・・・。

 

恐ろしい文字数になりました。

発売からもめちゃくちゃ時間がたちました。

頭お花畑の感想書き殴りですがそれでもこの作品の愛と幸福が誰かに届けばいいと思います。

 

辛いし苦しいけれど涙が出るほど愛しい作品です。大好きです。

ありがとうございました。

 

2021/4/14